【翻訳】医学論文の抄録

知人のドクターから医学論文の抄録の英訳を依頼された。この分野(外科)の英訳はあまり経験はないが、専門用語が並んでいる文書は、むしろ翻訳者としてはありがたい。専門用語については依頼者の方が熟知しているし、今はインターネットを駆使すればいくらでも調べようもある。

しかし、ざっと読むとやはり難しい言葉の羅列で、一般人には意味不明。でも、わからないながらもどういう症例でどういう手術を行ったのかということを理解しないと、やはりちゃんと英語にならない。で、かなりいろいろと調べることに。専門用語は日本語そのものより英語のほうが意味が汲み取りやすい。で、その英語をさらに英語で調べると、なるほどそんな感じのことねと、やっていることの内容はなんとなくわかる。

このあたりのことを把握しないと、専門用語以外の部分、経過とか経緯とか、そういった説明的な文を正しく伝えることはできない。抄録はA42枚ほどの分量だが、その手術にかかわる人たち、患者さんや家族、医師の気持ちまでをどっぷり味わうことになる、貴重な経験だった。

実は心臓に複雑な奇形を持つ7か月の赤ちゃんが生体肝移植を受けたもの。このケースは世界にも報告例がなく困難を極めるにもかかわらず、術後1年、順調に回復しているという。私は医者ではないので、その親の気持ちや赤ちゃんのことを考えると涙すら出る。

たった800字ほどの英訳でも、その世界をほんの少しでも覗いていろいろなことを知り感じることができる。おまけに、英訳という仕事でもしない限り、その分野の文献をそこまで理解を深めて読むことはないだろう。そういう意味でも翻訳の仕事っておもしろい。

2010年 3月 16日 | Posted in 英訳
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